2.20

まず次が成り立つ r.e. 集合 \(X' \supseteq X\) をとる(このような \(X'\) がとれることは下のコメント参照):

  • (1) \(X'\) は monoconsistent with \({\sf Q}\),
  • (2) \(\varphi \to \psi \in X'\) かつ \({\sf Q} \vdash \varphi\) ならば \(\psi \in X'\),
  • (3) \(\varphi \in X'\) かつ \({\sf Q} \vdash \varphi \to \psi\) ならば \(\psi \in X'\).

\(X'\) は r.e. なので \(X' = \{k : \exists m P(k, m)\}\) となるような原始再帰的関係 \(P\) がとれる. \(R(k, i, \gamma, p)\) を次の原始再帰的関係とする:

"ある二進列 \(s\) があって,\(s_k = i\) であり \(P(\gamma(0)^{s_0} \lor \cdots \lor \gamma(k)^{s_k}, p)\) が成り立つ".

\(\rho(x, y, z, w)\) を \(R(k, i, \gamma, p)\) の PR binumeration とし, \[ {\sf Q} \vdash \eta(x) \leftrightarrow \forall z(\rho(x, 0, \eta, z) \to \exists u \leq z \rho(x, 1, \eta, u)) \] を満たす \(\Pi_1\) 論理式 \(\eta(x)\) をとる. ここで \(\eta(k)\) という形の文のトートロジーでないような propositional combination \(\xi\) の conjunctive normal form \(\xi_0 \land \cdots \land \xi_m\) をとれば \({\sf Q} \vdash \xi \to \xi_0\) となる(ここで各 \(\xi_j\) は異なる \(k\) について \(\eta(k)^i\)(\(i = 0, 1\)) という形の文の disjunction). したがって \(\xi_0 \notin X'\) が示せれば、条件 (3) より \(\xi \notin X'\) が従い,\(X' \supseteq X\) より \(\xi \notin X\) が結論付けられる. またある二進列 \(s\) と自然数 \(n\) について \({\sf Q} \vdash \xi_0 \to \eta(0)^{s_0} \lor \cdots \lor \eta(n)^{s_n}\) なので,条件 (3) より \(\eta(0)^{s_0} \lor \cdots \lor \eta(n)^{s_n} \notin X'\) ならば \(\xi_0 \notin X'\) である.
以上より,全ての二進列 \(s\) と自然数 \(n\) について \(\eta(0)^{s_0} \lor \cdots \lor \eta(n)^{s_n} \notin X'\) となることが示せればよいことがわかった.

\(\eta(0)^{s_0} \lor \cdots \lor \eta(n)^{s_n} \in X'\) となる二進列 \(s\) と自然数 \(n\) があると仮定して矛盾を導く. そのような二進列 \(s\) があるような最小の \(n\) をとる.

  • \(n=0\) のときある二進列 \(s\) について \(\eta(0)^{s_0} \in X'\) である. \(P(\eta(0)^{s_0}, p)\) となるような \(s\) がある最小の \(p\) をとる.
    • \(s_0 = 0\) のとき:\(\eta(0) \in X'\) である. \(p\) の取り方より \({\sf Q} \vdash \rho(0, 0, \eta, p) \land \forall u \leq p \neg \rho(0, 1, \eta, u)\) なので \({\sf Q} \vdash \neg \eta(0)\) となり,\(X'\) が monoconsistent with \({\sf Q}\) であることに反する.
    • \(s_0 = 1\) のとき:\(\neg \eta(0) \in X'\) である. \(p\) の取り方より \({\sf Q} \vdash \rho(0, 1, \eta, p) \land \forall z < p \neg \rho(0, 0, \eta, z)\) なので \({\sf Q} \vdash \eta(0)\) となる. よって \(X'\) が monoconsistent with \({\sf Q}\) であることに反する.
  • \(n > 0\) のとき,ある二進列 \(s\) について \(\eta(0)^{s_0} \lor \cdots \lor \eta(n)^{s_n} \in X'\) である. \(P(\eta(0)^{s_0} \lor \cdots \lor \eta(n)^{s_n}, p)\) となる \(s\) があるような最小の \(p\) をとる.
    • \(s_n = 0\) のとき:\(\eta(0)^{s_0} \lor \cdots \lor \eta(n) \in X'\) である. 条件 (3) より \(\neg \eta(n) \to \eta(0)^{s_0} \lor \cdots \lor \eta(n-1)^{s_{n-1}} \in X'\) である. \(p\) の取り方より \({\sf Q} \vdash \rho(n, 0, \eta, p) \land \forall u \leq p \neg \rho(n, 1, \eta, u)\) なので \({\sf Q} \vdash \neg \eta(n)\) となる. 条件 (2) より \(\eta(0)^{s_0} \lor \cdots \lor \eta(n-1)^{s_{n-1}} \in X'\) となるため,\(n\) の最小性に反する.
    • \(s_0 = 1\) のとき:\(\eta(0)^{s_0} \lor \cdots \lor \neg \eta(n) \in X'\) である. 条件 (3) より \(\eta(n) \to \eta(0)^{s_0} \lor \cdots \lor \eta(n-1)^{s_{n-1}} \in X'\) である. \(p\) の取り方より \({\sf Q} \vdash \rho(n, 1, \eta, p) \land \forall z < p \neg \rho(n, 0, \eta, z)\) なので \({\sf Q} \vdash \eta(n)\) となる. 条件 (2) より \(\eta(0)^{s_0} \lor \cdots \lor \eta(n-1)^{s_{n-1}} \in X'\) となるため,\(n\) の最小性に反する.

いずれの場合も矛盾するため,全ての二進列 \(s\) と自然数 \(n\) について \(\eta(0)^{s_0} \lor \cdots \lor \eta(n)^{s_n} \notin X'\) となることが示せた.


コメント

\(X\) を monoconsistent with \({\sf Q}\) である r.e. 集合とする. このとき,

  • (1) \(X'\) は monoconsistent with \({\sf Q}\),
  • (2) \(\varphi \to \psi \in X'\) かつ \({\sf Q} \vdash \varphi\) ならば \(\psi \in X'\),
  • (3) \(\varphi \in X'\) かつ \({\sf Q} \vdash \varphi \to \psi\) ならば \(\psi \in X'\),

を満たす r.e. 集合 \(X' \supseteq X\) がとれることを証明する.

まず集合の列 \(X_0, X_1, \cdots\) と \(Y_1, Y_2, \cdots\) を次のように定める:

  • \(X_0 : = X\)
  • \(Y_{i+1} : = X_i \cup \{\psi : \varphi \to \psi \in X_i\) かつ \({\sf Q} \vdash \varphi\}\)
  • \(X_{i+1} : = Y_{i+1} \cup \{\psi : \varphi \in Y_{i+1}\) かつ \({\sf Q} \vdash \varphi \to \psi\}\)

そして \(X' : = \bigcup_{i \in \omega} X_i\) とする. \(X' \supseteq X\) であることは明らか. また各 \(i \in \omega\) について \(X_i\) は r.e. 集合なので \(X'\) も r.e. 集合である.

  • (1) 各 \(i \in \omega\) について \(X_i\) が monoconsistent with \({\sf Q}\) であることを \(i \in \omega\) に関する帰納法で証明する. \(X_0\) は monoconsistent with \({\sf Q}\) である. \(X_i\) が monoconsistent with \({\sf Q}\) であると仮定する. まず \(\varphi \to \psi \in X_i\) かつ \({\sf Q} \vdash \varphi\) とすると,\({\sf Q} \vdash \neg \psi\) ならば \({\sf Q} \vdash \neg (\varphi \to \psi)\) なので \(X_i\) が monoconsistent with \({\sf Q}\) であることに反する. したがって \({\sf Q} \nvdash \neg \psi\) であるから,\(Y_{i+1}\) は monoconsistent with \({\sf Q}\) である. 続いて \(\varphi \in Y_{i+1}\) かつ \({\sf Q} \vdash \varphi \to \psi\) とすると,\({\sf Q} \vdash \neg \psi\) ならば \({\sf Q} \vdash \neg \varphi\) となり,\(Y_{i+1}\) が monoconsistent with \({\sf Q}\) であることに反する. したがって \({\sf Q} \nvdash \neg \psi\) である. つまり \(X_{i+1}\) も monoconsistent with \({\sf Q}\) である.

    以上より \(X'\) は monoconsistent with \({\sf Q}\) である.

  • (2) \(\varphi \to \psi \in X'\) かつ \({\sf Q} \vdash \varphi\) とすると,ある \(i \in \omega\) について \(\varphi \to \psi \in X_i\) なので \(\psi \in Y_{i+1} \subseteq X_{i+1} \subseteq X'\) である.
  • (3) \(\varphi \in X'\) かつ \({\sf Q} \vdash \varphi \to \psi\) とすると,ある \(i \in \omega\) について \(\varphi \in Y_{i+1}\) となる. よって \(\psi \in X_{i+1} \subseteq X'\) となる.